「あ、うん。ありがとう……」

 もしかして、夜道を帰る私のことを心配してくれてるのだろうか。


 坂部くんは冷たい人だと思っていた。

 けれど、さっきミーコさんの話を聞いたから、余計に些細なことさえ気に留めてしまうのだろうか。今の坂部くんの一連のやり取りを思い返しても、不器用なだけで本当は優しいんじゃないかと感じる。


「じゃあ」

「あ、ちょっと待って!」

「何だよ」

 坂部くんは閉めかけたドアをそのままに、少し鬱陶しそうにまゆを寄せる。


 思わず呼びとめてしまったけれど、先ほど聞いたミーコさんの話の真偽をどうやって確認すればいいのだろう。

 坂部くんに面と向かって人見知りなのか聞くのは、ちょっと違う気がする。

 けれど、坂部くんが異様に相手を警戒する癖があって、それが彼自身が人と関わることに対して大きな妨げになっているのなら、それはとても生きづらいんじゃないかと思った。