「あの、少し気になったんですけど、ミーコさんって元々は猫として生きていたんですよね? あやかしって、動物が死んだあとの姿とかなんですか?」

「うーん、難しい質問ですね。みんながみんなそういうわけではないです。想いの差というのもあると思いますが、同じ動物でも亡くなったあとにあやかしにならない者もいます。むしろ、あやかしになる方が少数派です。それよりは、実在するあやかしは、あやかし同士が結ばれた結果として生まれた方が多いですね」

「そうなんですね」

 どうやら、一人のあやかしが誕生するのに用意されているのは一つの道筋のみではないらしい。


「単純かもしれないけど、ミーコさんの話を聞いて坂部くんを見る目が少し変わったかも。なんか意外……」

 そんな私に向かって、ミーコさんはうふふと可愛らしく微笑んでいる。


「確かに言い方は味気ないところがありますが、根はとてもお優しい方です。そういえば綾乃さん、ここが寄り道カフェと名付けられた由来をギンさんからお聞きしましたか?」

「え? いや、聞いてないです」

「生きていると楽しいことばかりではないでしょう。つらいことや悲しいこと。そうでなくても、頑張りすぎて疲れてしまうときもあるでしょう。それは人間もあやかしも同じです。そんなとき、あやかしも人間もわけ隔てなく、少し足を止めて甘いものとともにゆっくり休んでいける、そんなちょっと寄り道できる場所を提供したいという思いから、ギンさんはこのお店を始められたそうです」

「……そうだったんですか。あやかしも人間もわけ隔てなく、甘いものとともにゆっくり休んでいける……」


 気づけば、ミーコさんの言葉を復唱していた。

 それは、私が素直に坂部くんの考えに心を動かされたからだ。