一向に何かを話してくれる様子のない坂部くんにしびれを切らして、私は話を続ける。


「嫌じゃないなら、いいじゃん。自分から人を突き放して寂しそうにしてるくらいならさ、何か坂部くんの態度って矛盾してるよね」

「……言いたいことはそれだけか?」


 坂部くんのまゆがピクリと動く。

 私は何か気に障ることを言ってしまったのだろうか。


「え……?」

「俺のことなんて放っておけばいいだろう。ついこの前まではおまえも俺のことなんて気にも留めてなかったんだから」


 坂部くんは疲れたようにそう言うと、空になったクレープの包み紙をくしゃりと丸める。

 確かに寄り道カフェで働くまでは、私も坂部くんに話しかけるようなことはなかった。


「そうだけど……。でも、私は坂部くんに突き放すような態度を取られるのは嫌。少なくとも深入りするなって言われたとき、私は寂しかったよ。私は坂部くんが何であっても、関わっていきたいって思っているのに」


 思わず言ってから、一気に顔が熱くなる。

 何だか自分がとんでもなく恥ずかしいことを言ってしまったのではないかと思ったから。

 ちらりと坂部くんの様子をうかがうと、驚いたとばかりに目を見開いている。同時に、漆黒の瞳は少し戸惑っているように揺れていた。

 っていうか、固まってないで何か言ってよ。余計に恥ずかしくなるじゃん……。