「……私たちが、人間だから?」

「おまえ、ここでその話題はよせ」

「そんなに大きな声で話してないし、みんな私たちの会話なんて聞いてないって。根本的なことには触れないようにするから」


 確かにあやかしがどうとか、そんな話を寄り道カフェ以外の場所でするのは、どこで誰に聞かれてるかわからないからやめた方がいいことはわかっている。

 けれど、聞けるときに聞いておきたい。


「何が言いたい。単刀直入に話して」


 とりあえず話を聞いてくれるということだろうか。

 坂部くんの切れ長の瞳は、すぐにでもここから立ち去ってやるとでも言っているように見える。


「……やっぱり、人間との別れがつらいからなの?」

「は?」


 坂部くんにとって、想定外の内容だったのだろうか。坂部くんは「何だ急に」と眉を寄せた。


「どんなに親しくなっても、坂部くんたちは本来の姿を隠し続けないといけない。そして、いつか築いてきた人間関係から自ら離れないといけない日が来るから、避けてるの?」


 あやかしと人間とでは寿命が違うから仕方ないことで、それが嫌なら深入りするなと言ったのは坂部くんだ。

 そんな風に言うってことは、実は坂部くんの方が人間との別れがつらくてクラスメイトや私のことを突っぱねてるのではないかと思った。

 真相にたどり着いたとばかり思っていたのに、坂部くんは呆れたと言わんばかりにため息を吐き出した。


「何を履き違えたのか知らないが、俺は別に、別れがつらいから人付き合いを避けてるなんてことはない」

「え……、違ったの?」


 我ながら名推理だと思っていたのに、あっさりと否定されてしまって呆気に取られる。