それほど混んでる様子はなく、少し待てば私のクレープを焼いてもらえた。


「苺とチョコのクレープです」


 甘いものに目がない私は、これがお昼ご飯であろうと誘惑に負けて甘い系のクレープを選んだ。

 今日くらい、いいだろう。


 教室内に四つずつ合わせて並べられたテーブルの島がいくつかあり、好きなところに座っていいと中に誘導される。

 まばらに人が座る中、意外な人の姿がそこにあることに気がついた。


「坂部くん」


 それほど大きな声を出したわけではなかったが、どうやら本人の耳に私の声は届いていたらしい。

 クレープを持った坂部くんの瞳は、少し驚いたように開かれている。いつもは感情が全く読めない顔をしているのに、それもまた珍しい。

 目があったことから、何となく坂部くんの向かいの空いた席の前まで進む。


「坂部くんもクレープなんだね。ここ、いい?」

 すぐそばの椅子の背を片手の平でポンポンとする。


「別にいいけど」

 ……良かった! これでダメなんて言われたら相当気まずいし、つらい。だからとりあえず私がここにいることを許容されたことに胸を撫で下ろす。


「それは昼食後のデザートか?」

 坂部くんの視線は、私がかじりついたクレープに注がれている。


「ううん。お昼ごはんだけど」