苦し紛れにそう言うけれど、もう明美に隠し通すのは限界が近いのかもしれない。

 *

 模擬店の仕事と自由時間は、前半と後半で交代制だ。

 前半に模擬店の仕事を終えた私と明美は、後半、ようやくそれらから解放されて自由になる。


「そういえば明美ってこのあと吹奏楽部の発表があるんだよね」

「うん。せっかく模擬店の仕事終わったのに悪いけど、すぐに部活の方にいかないといけないんだ」


 文化祭の冊子には、まだ吹奏楽部の演奏は少し先の時間が記載されているが、楽器の準備諸々で時間がかかるのだろう。


「ううん、仕方ないよ。私はどこかで軽くお昼食べてから見に行くから。頑張ってね」

「ありがとう!」


 小さくなる明美を見送りながら、これからどうしようと考える。

 こうなることは予想していたが、万が一明美と一緒に食べることになった場合のことも考えて、他の誰ともお昼を食べる約束をしていなかったんだ。


 ……とりあえずお腹空いたし、何か食べに行こうかな。

 私たちのクラスと同じように食べ物を提供している模擬店はいくつもある。

 フランクフルトやフライドポテト、たこ焼きなど、お祭りの屋台で見かけるような物が主だ。


 クラスごとに華やかな装飾のされた教室を見ながら歩いて、結局一目見て引かれたクレープを食べることにした。

 パンケーキをやっている私たちのクラスから見ればそれに近しい模擬店ではあるが、だからといってライバル意識を持っているというわけでもないので問題ないだろう。