「それならわざわざ教えなくても、交替すればいいだけの話だろ。……おい」

 一人で勝手にそう決めて、坂部くんは男子二人組に声をかける。

 男子二人組は、坂部くんに声をかけられると思っていなかったのだろう。二人揃って頭の上にはてなが浮かんでいるように見える。


「それ、俺が代わるから。二人は接客やって」

「は……っ」

「な……っ」

 坂部くんの単刀直入過ぎる言い方や、投げやりな態度にその場にズッコケそうになる。


「ちょっと坂部くん、そうじゃないでしょ」

 明らかに坂部くんに対して嫌悪の瞳を向ける二人と坂部くんの間に割って入る。


「あのね、坂部くんって実はデコレーションが得意だから。ちょっとコツとか教えてもらったらいいかなって思って」

「はぁ? そこまでしなくても」

「文化祭に何本気になってんの?」

 男子二人組は明らかに面倒臭そうな雰囲気を漂わせる。


「ってか坂部がデコレーションが得意? こいつがか?」


 そして、男子二人組のうちの一人がまるで信じられないとばかりに坂部くんを見やる。

 少し小バカにしたような物言いをされて、坂部くんのプライドが許さなかったのだろうか。

 坂部くんの眉がピクリと動いたのが見えた。