私たちが男子二人組の分までデコレーションをするのは厳しい。かといって、男子二人組が難なくデコレーションができるように手を貸すのはもっと難しい。

 そのとき、再び視界の隅で坂部くんがカーテンの向こうから戻って来るのが見えた。


「坂部くん……!」


 クラスの人と接点を持たせるきっかけになればと思って、最近何かと学校で坂部くんに話しかけるようにしていたからだろう。

 私の声に、坂部くんは少しうっとうしそうにこちらを見やる。


「何?」

「今、オーダーの方ってどう? 忙しい?」

「別に。他に三人いるからむしろ余裕。その三人はよく客と話しているが、それでも問題ない」


 坂部くん以外のオーダー担当の男女は、クラスでも顔が広く話上手な人が当たっている。

 そのため、顔見知りが来たらちょっとした世間話をしているということなのだろう。


 その点、純粋にオーダーを取ってパンケーキを運んでいるだけの坂部くんは頻繁にカーテンの向こうに出ていったり戻ってきたりしている。


「それならちょうど良かった。あの二人にデコレーション教えてあげてくれる?」

「は?」

「坂部くん、得意でしょ? 上手くできなくて困ってるみたいなの」

「……ああ」

 男子二人組がデコレーションしたパンケーキも運んでいた坂部くんは、少し思い出したように鼻で笑うように息を吐いた。