「うるさいな。おまえだって、この生クリーム酷すぎじゃね?」

 私たちが思わず振り返って見ると、デコレーションとは思えない酷い有り様のパンケーキが男子二人組の間にあった。


「ちょっとあんたたち、真面目にやりなさいよ。あんたたちがそんなんじゃ、私たちにしわ寄せが来るじゃない」

 すぐに次のパンケーキの生クリームのデコレーションに取りかかっていた私を待っていた明美が、男子二人組にズカズカと寄っていく。


「だってデコレーションなんてやったことなかったんだもん」

「じゃあ何でデコレーション担当に立候補したのよ」


 文化祭の係り決めは立候補制だった。

 私と明美がデコレーション担当になったのは、二人でやりたかったことと、デコレーションをやってみたいという明美の希望からだ。器用な明美は初心者とは思えないくらいの腕前だ。


「だってオーダー取るのってめんどくさいし、パンケーキ焼くのって失敗が許されなさそうでさぁ。宣伝は希望者多数でじゃんけんで負けちゃったし」

「デコレーションだって失敗が許されないから! どうすんのよ、そのパンケーキ!」


 明美は、適当なことが許せない性格だ。

 だからこそ目の前の男子二人組のことも許せないのだろうけれど、そんなことを今言っても正直仕方ないことだと思う。


「明美! チョコペンのデコレーションお願い」

「……はーい」


 明美は納得いかない表情のままこっちに戻ってくる。

 相も変わらず後ろからは、ふざけたような笑い声が飛び交っている。

 最初こそ真面目にやっていたように見えた男子二人組だったけど、あまりにデコレーションが二人にとって難しくて、匙を投げたと言ったところだろうか。