慌てて店内にかかる時計を見上げると、家を出た時点で昼過ぎだった時刻は、すでに夕方と呼ぶのに相応しい。

 さらには、店内から見える外の景色も、オレンジに染まっていた。


「どうしよう……」


 さすがにもう母親も祖母の家から戻っていてもおかしくない。

 今から急いで買い物して帰らなきゃ。


「あら、もしかして悪いことしちゃったかしら」

「いえ、そんなことないですよ」

「遠慮しないで。あたしたちの仲じゃない。出来ることは手伝うわ」


 そう言って私に向かってウインクをしてくる京子さんとの仲は、本当にこの数時間で縮まったのだと実感して胸が熱くなった。

 *

「あのあと、大丈夫だった?」

 週明けの月曜日。学校の都合で少し遅れてバイトに入った私を待っていたのは、京子さんだった。


「はい。どこで遊んで帰ってきたのとは言われましたが、京子さんのおかげで、母に雷を落とされずに済みました」


 あのあと、京子さんは私の買い物に付き合ってくれた。

 そのとき、母の買い物メモから夜ご飯を推測した京子さんは、なんと母のメモの不備を見つけて追加で買い物をして帰ったのだ。


 結果、母も帰りの遅い私にヤキモキしつつも、「ありがとう」とその場を収めることができた。本当に感謝しかない。


「それなら良かったわ。綾乃にね、ひとつ報告があるの」

「何でしょう?」

「あたし、好きな人ができたの」

「……へ?」