「わぁ~っ」

 目の前に並んだケーキを見て一気に胃の運動が活発化したのか、同時にきゅるきゅると高い音を立てた。


「ぷっ」

 それは坂部くんにも聞こえていたようで、あろうことか彼は吹き出すように笑った。


「ちょ、ちょっと、笑うことないでしょ?」

「甘いものに目がないとは聞いていたが、食い意地張りすぎだろ」

「ムッキー! ちなみに今日は私もお客さんなんですけど!」


 坂部くんの発言に思わず憤慨してしまったけど、それでも堪える様子もなく肩を震わせる坂部くんを、思わずガン見してしまった。


「なんだよ」

 それに気づいた坂部くんは、いつもの不機嫌そうな顔に戻ってそう問い返してくる。


「……いや、坂部くんも笑うことがあるんだなって」

「別に。おまえが笑わせるようなことするからだろ? それより、早く食べなよ。京子さん、待たせてるぞ」


 向かいに座る京子さんに視線を戻す。京子さんは片手にフォークを持って、私たちの会話が終わるのを待っていてくれているような風だ。


「ああっ、す、すみません……っ」

「いいのよ。ギンと綾乃って、仲いいのね。びっくりしちゃった」

「全然っ。いつも坂部くんって冷たくて……。私をここで雇ったのも、私が偶然坂部くんの正体を知っちゃったから……っ」