さすがに今入ったら、坂部くんに変に思われるだろうか。

 っていうか、坂部くんもああ見えて実は甘いものが好きなのだろうか。


 木目調のドアをすぐに開ける勇気が持てず、中がよく見えるように作られた大きい窓の向こうを覗く。

 少しスモークのかかったガラスは、向こうが全く見えないわけではないが、少し見えづらい。


 スモークのせいで薄暗く見える店内の様子を見ると、先程の買い物袋をそばのテーブルの上に置く坂部くんの姿が見えた。

 坂部くんが制服のワイシャツのボタンに手をかける。

 次の瞬間、私は思わず食い入るようにカフェの窓に額をくっつけていた。


「……えっ?」

 ふわふわとした煙のようなものに、突如坂部くんの姿がすっぽりと覆われてしまったからだ。


「えええええええっ!?」

 そして次に坂部くんの姿が見えたとき、私は思わず大きな声を上げてその場に尻餅をついた。


 何が起こっているの……?

 煙が消えたとき、坂部くんが居たところに見えたのは、大きな漆黒のモフモフとしたものだった。

 動物を連想させるような物を目にして内心戸惑う。


 あれって、尻尾? まさか……っ!


 仮にカフェに動物がいるとすれば、もしかしてここは猫カフェとかそんな類いのものなのだろうか。