「さすがにそれはしんどいじゃない。どうせあんた暇なんだから、いいでしょ。じゃあ買うもの、中のメモに書いてあるから。おばあちゃん待ってるから、行ってくるわね」


 母親は早口で捲し立てるように言うと、まるで押し付けるように財布とメモの入ったエコバッグの取って部分を私の手に握らせて、バタバタと玄関を出ていってしまった。


 母親から見れば確かに私は暇に見えるのかもしれないが、いかにも人が暇人であるかのようには言わないでほしい。

 掃除なんていつだってできるとは言っても、なかなかやる気になれないものだ。今日は珍しくやる気になったというのに……。まぁでも、厳しい祖母の世話を任されるよりマシか。


「……仕方ない。行ってくるか」

 私は小さく息を吐き出すと、エコバッグからメモを取り出して玄関を出た。

 *

 いつも母親が利用している店は、商店街の中にある全国チェーンのどこにでもあるようなスーパーだ。

 基本的にはそこの特売品と商店街の中の八百屋や肉屋で安く商品を買ってくる。

 今回も例外なくスーパーと八百屋と肉屋それぞれで買ってくるものが丁寧にリスト化されていた。


 土曜日で晴天ということもあり、商店街のある通りに出るまででも、小さい子を連れて散歩をしている親子連れを数組見かけた。

 そうだ。せっかく商店街に行くのなら、休日の寄り道カフェを見に行ってみようかな。

 商店街から外れたところにある、人間の見た目をしたあやかしの経営するカフェは、まだまだ謎に包まれているから、少しでもいろんな一面を目にしたい。