「学校でも坂部くんってクラスメイトとも全然溶け込もうとしないでしょ? せっかく人間の高校生の姿になってまで学校に通ってるんだから、気にせずみんなと仲良くしたらいいと思うよ」

「……学校は勉強をするために通うところだろう? 勉強ならちゃんとしてる」


 坂部くんは成績上位者だし、言ってることは間違ってない。

 けれど、人付き合いという点に関して見れば、決して誉められた回答ではないと思う。


「それは間違ってないけど、友達を作って、いろんな世界を持った人と触れ合うこととか、勉強だけじゃない学校でしか学べないことだと思う」

「……そうか。まあ、そうかもしれないな」


 思いの外すんなりと聞き入れてくれたように見えて、一瞬拍子抜けしそうになる。


「人間としてはそういうメリットもあるんだな、学校って。けど、俺はみんなとは違うから」


 しかし、納得したように見えたのは私の勘違いだったようだ。

 私の意見は無用とばかりに突っぱねられてしまったのだから。


 視線を手元に戻す坂部くんに、もうこれ以上話すことはないと、境界線を張られているように見える。

 けれど同時に、坂部くんの横顔からは先ほども感じた哀愁のようなものが見えた。