私は恋に憧れのようなものは抱いているものの、身を焦がすような恋愛をまだしたことがない。

 だからこそ、京子さんの気持ちも想像することしかできない。


「……あやかしと人間の恋って、あまり想像つかないけど、やっぱり難しいのかな」


 今回は正体がバレたわけではなく恋人の心変わりが原因だと京子さんは話していたけれど、過去の恋人は正体がバレたのが原因だと言っていた。

 それに坂部くんは、恋に破れた京子さんに綺麗に別れられてよかったんじゃないですか、なんてことを言っていた。

 坂部くんがただの意地悪で言った可能性もあるけれど、仮にそうじゃないとしたら、やっぱり障害の多い恋になるっていうことなんだよね……?

 私のつぶやきにも「……そうですね」と考えるように応えてくれるミーコさんの声が耳に届く。


「双方がお互いの存在を認め合うことができるのが理想的だと思います。けれど現実的にはなかなかそうはいかず、京子さんのようにあやかしであることを隠して人間とお付き合いされている方が多いですね」

「……そうなんですね」


 ……やっぱりそうなんだ。

 私もそうだったけど、本当の姿だと正体を明かされた時点で、大多数の人間はパニックを起こすことは目に見えている。

 もしかしたら私が気がついていないだけで、知らない間に坂部くんやミーコさん、京子さん以外にも私はあやかしと出会って時間をともにしていたのかもしれない。


「それは恋人のみならず、友人等の付き合いにも言えることですね。私たちと人間は、寿命も暮らしも全く異なっています。私たちのように、人間の世界に溶け込んで暮らす道を選んだ者は、必然的に人間側に合わせていくことになるのですが」

「そんなにあやかしと人間は違うんですか?」