「あ、本当だ。あたし、化けるの上手くないみたいで、感情的になるとすぐに身体が元の姿に戻ろうとするんだよね」


　教えてくれてありがとう、と何でもないように言う京子さんだが、私にとっては一大事が起きたような衝撃だ。

　京子さんって、人間じゃなかったの？

　私の中にわき上がるそんな問いにこたえるように、ミーコさんが口を開く。


「あ、言ってませんでしたっけ。京子さんの本当の姿は、キツネのあやかしなんです。類は友を呼ぶように、このお店に来るお客様は人間に混じって、人間に化けたあやかしもよく来られるんですよ」

「……え、そうなんですか？」


　それを早く言ってくださいよ……！

　ミーコさんも坂部くんも、私の前では人間の姿をしている。坂部くんに関しては、高校生男子の姿で学校にも通っているくらいだ。改めて考えてみれば、他にも人間の姿をして、人間の世界に混じって暮らしているあやかしだってたくさんいるのかもしれない。

　けれど、最近首を突っ込んだばかりの摩訶不思議な世界のことを、すぐに目の前で起こった現実と結びつけることは、とても難しいことだ。

　もしかして、さっき坂部くんが言ってた京子さんの本性って、本当は狐のあやかしだということだったのだろうか。

　というのも、今「本性隠すのが苦手なのは間違ってないじゃん。むしろ下手すぎ」と坂部くんかぼやいているのが聞こえた。


「ああ。そういえば、新入りちゃんって、ギンと同じ高校に通う普通の人間なんだっけ？　驚かせてごめんね」