今日のケーキは、三種のベリーのムースだ。

 透明のカップに数層のムースが重なり、一番上のベリーのシロップの層の上には、ラズベリーとミントの葉が飾られている。


「ああ、この甘酸っぱさ。まさに恋の味と言うのね……。つい、涙が」

「京子さん、最初から泣いてたでしょう?」

 淡々と言い返す坂部くんを、涙を浮かべたまま京子さんがにらみつける。

「うるさいわね。ギンにはココロってもんがないの? ねぇ、新入りちゃん」

「は、はぁ……」


 このタイミングで、私に振らないでほしい。

 確かに坂部くんの言い方は冷たいような気はするけど、坂部くんの目の前で「はい、そうですね」と言える度胸はない。

 ちらりと坂部くんの方を見やると、呆れたようにため息を吐き出した。


「まぁ、でも本性を隠すのが苦手な京子さんにはよかったんじゃないですか? いつまでも本性を隠すのも大変ですし、バレる前に綺麗に別れられたじゃないですか」

「よくないわよ! もう、ミーコちゃん、この小生意気な狼、ボコってもいい?」

「えええっ!? それでしたら、代わりにこのミーコをお殴りください。この度はご無礼をお許しくださいませ」


 今にも坂部くんにつかみかかりそうだった京子さんの前に、そばで私たちの会話を見ていたミーコさんがたちはだかる。

 坂部くんを必死に擁護するミーコさんの図が衝撃的で、思わず二人の関係性について瞬時に考えてしまった。

 少なくとも寄り道カフェは、私がバイトで入る前はずっと坂部くんとミーコさんの二人でやっていたみたいだし、二人は恋人とかなのだろうか。