「あ、あの……っ、おしぼりお持ちしますね……」


 さすがにミーコさんが戻ってくるまで、テーブルに突っ伏して泣き続ける京子さんのそばに突っ立ってるわけにはいかないだろう。

 どうしていいかまだ入って一週間の私にはわからなくて、苦し紛れにそう告げる。が、一旦その場を去ろうとした私の手は、なんとそこに突っ伏して泣いていた京子さんによってガシッとつかまれてしまった。


「新入りちゃん、一人にしないでよ」

「……え、えっと」

「そこ、座って。接客も重要な仕事でしょ?」

 顔を伏せたまま、京子さんは私の手首をつかんだ手を一旦離して、彼女の座る席の向かい側にある椅子を指さす。


「はい。すみません……」

 これが接客の範疇に入るのかは謎だけど、さすがに断ることができなくて、私は京子さんの向かいに腰を下ろす。


 京子さんには歳下の彼氏がいるというのは、初めて会った日に聞かされていた。

 とても恋愛経験が豊富なようで、十五人目の彼氏だと言っていた。

 詳しい年齢までは知らないけど恐らく二十代前半だろう京子さんは、結構なスピードで恋人が代わっていたということがうかがえる。