私の両肩を持つ京子さんはワナワナと小刻みに震えていて、とてもじゃないけれど尋常ではないように見える。


「あたし、フラれちゃった」


 京子さんは私を見て顔を青くしてそう告げると、そのままわあああと声を上げて泣き出してしまった。

 寄り道カフェは商店街から細い路地を通らないとたどり着かない場所ということから人目はないけれど、すぐ裏手には住宅も立ち並んでいる。

 さすがにここで大声で泣き続けられてはいけないから、私は何とか京子さんを店内に誘導した。


「いらっしゃいませ。わああ、京子さん。どうされたのですか?」

 京子さんが店内に入るなり、泣き声を聞き付けて奥からミーコさんが飛んでくる。


「ミーコおおおおお!」

 ミーコさんの姿を見るなり、京子さんはがばりとミーコさんに抱きついた。


「すぐに本日のケーキセットをお持ちしますので、こちらに座って待っていてください。ドリンクはいつものですね?」

「ああああ……っ!」


 ミーコさんの言葉に対して、京子さんは言葉にならない声を発した。

 京子さんはいつも必ずここに来たときは決まって本日のケーキセットを頼み、それについてるドリンクはアイスミルクティーを選ぶ。

 だからなのだろう。ミーコさんはそれを肯定ととらえ、厨房の方へ急ぎ足で戻っていってしまった。


 そこで、あ、と思った。

 今、私は目の前でわんわんと泣く京子さんと二人この閉鎖空間に残されてしまった。

 この状況で、私は一体どうしたらいいのだろう。