「……前方不注意」
坂部くんは横目で私を見ると、それだけ言って再びケーキの上に生クリームを絞る作業に戻る。
「ご、ごめんなさい……」
また、やってしまった。
今のは完全に甘いものに目を奪われた私の不注意だ。
気をつけるようにしているものの、何もないところでつまずいたり、コップを落としてしまいそうになったり、坂部くんが冷蔵庫から出しておくように指示されたものを間違えたり、何かとミスをしてしまう。
その度にやっぱりドジな私にはバイトなんて向いてないんだと思い知らされて、憧れていたバイトを大好きなケーキに囲まれた環境でできることが嬉しい反面、つらくもあった。
実際、私のミスは坂部くんの妖術でいつも何とか大事になることはないが、これが普通のカフェだったら間違いなく一日や二日でクビにされていたのだろうと思ってしまう。
ああ、どうして私ってダメなんだろう……。
「綾乃さん、気を落とさないでください。大丈夫ですので。では間もなく開店時間ですので、入り口のドアプレートをopenにして、お店の外の掃除をお願いできますか?」
「はい……」
不意にかけられたミーコさんの優しい言葉が胸に沁みる。
ミーコさんは猫のあやかしだからなのか、人間の姿でも猫目の印象がとても強い。さらに大きな目に整いすぎた目鼻立ちのせいで、美人とはいえ少しキツそうに見える。
けれど、そんな見た目の印象とは対照的に丁寧な口調でとても優しいお姉さんのような感じだ。
ミーコさんは、あやかしとしては坂部くんよりも若く、まだあやかしになってから三十年くらいらしい。
坂部くんは横目で私を見ると、それだけ言って再びケーキの上に生クリームを絞る作業に戻る。
「ご、ごめんなさい……」
また、やってしまった。
今のは完全に甘いものに目を奪われた私の不注意だ。
気をつけるようにしているものの、何もないところでつまずいたり、コップを落としてしまいそうになったり、坂部くんが冷蔵庫から出しておくように指示されたものを間違えたり、何かとミスをしてしまう。
その度にやっぱりドジな私にはバイトなんて向いてないんだと思い知らされて、憧れていたバイトを大好きなケーキに囲まれた環境でできることが嬉しい反面、つらくもあった。
実際、私のミスは坂部くんの妖術でいつも何とか大事になることはないが、これが普通のカフェだったら間違いなく一日や二日でクビにされていたのだろうと思ってしまう。
ああ、どうして私ってダメなんだろう……。
「綾乃さん、気を落とさないでください。大丈夫ですので。では間もなく開店時間ですので、入り口のドアプレートをopenにして、お店の外の掃除をお願いできますか?」
「はい……」
不意にかけられたミーコさんの優しい言葉が胸に沁みる。
ミーコさんは猫のあやかしだからなのか、人間の姿でも猫目の印象がとても強い。さらに大きな目に整いすぎた目鼻立ちのせいで、美人とはいえ少しキツそうに見える。
けれど、そんな見た目の印象とは対照的に丁寧な口調でとても優しいお姉さんのような感じだ。
ミーコさんは、あやかしとしては坂部くんよりも若く、まだあやかしになってから三十年くらいらしい。