「できましたね。フルーツ生チョコタルトの完成です」


 最後のフルーツを載せ終わったところで、私の隣でミーコさんが控えめに拍手をする。

 何だかよくわからないままに作っていたけれど、美味しそう……!

 出来上がったフルーツ生チョコタルトを見て、口の中の唾液の量が増えるのを感じる。
 ついさっきフルーツタルトを食べたというのに、これだと食い意地を張っているみたいだ。


「ベースが生チョコだから、さっきのフルーツタルトとは違った風味が味わえるぞ」


 机を挟んで向かい側で私の様子を見ていた坂部くんが、満足そうに口を開く。

 いつも学校ではクールで表情ひとつ変えない坂部くんが、微かに微笑んでいるように見えた。


「さっきひとつフルーツタルトを食べたばかりだし、さすがに今は食べないだろうから、これは持って帰るといい。箱を用意する」

「……ありがとう」


 そんな気を遣ってもらわなくても、余裕でまだケーキのひとつやふたついける。何たって、甘いものは別腹なんだから。

 だけどさすがにそれを言うのは恥ずかしくて、申し訳なく思いながら持ち帰り用の箱を用意してもらうことにした。


 でもどうして坂部くんは、私にこのフルーツ生チョコタルトを作らせたのだろう。

 そう疑問を感じているうちに、坂部くんは小さめのケーキを入れる紙箱を手に戻ってくる。


「おまえにもできただろ?」

「……え?」

「ケーキ作り。これなら家で一人でもできるだろうから、甘いものが好きなら作ればいい」

「でも、今のは坂部くんやミーコさんが居たからで……」

「俺はチョコを溶かしただけだし、ミーコはフルーツを最初に少しのせただけだが」

「そうだけど……」