ビスケットを砕いて、チョコレートを混ぜ合わせて入れた次は、フルーツを切る?


「私、あまり上手に切れる自信ないんですけど」

 家での手伝いを全くしないわけではないが、私が包丁を触るのは家庭科の調理実習くらいだ。


「上手く切ろうと思わないで、心を込めて切れば大丈夫です」

「……そうですか?」

 私の目の前に薄っぺらいまな板を置くと、ミーコさんはそこにすでに八分の一カットくらいの大きさにされたメロンをのせる。そして、メロンの隣に果物ナイフを置いた。


「形はどんなものでもいいので、綾乃さんが食べやすい大きさに切ってください」

「え……?」

 私が戸惑っていると、ミーコさんが代わりにひとつサイコロ状に切ってくれる。


「こんな感じです」

 ミーコさんから果物ナイフを受け取ると、私もそれを真似てメロンを切る。順にいちごや四分の一のサイズにカットされているりんご、そして缶詰の黄桃も一口サイズに切った。


「みかん缶のみかんはそのままで大丈夫でしょう。綾乃さん、とてもお上手でしたよ」

「はぁ……」


 そんなに褒められるほどの腕でもないだろうに、にこやかに拍手をされて恥ずかしくなる。

 何だか突然ケーキのレッスンでも受けに来たような気分になる。そもそもここはカフェだし、私は坂部くんとミーコさんの秘密を知ってしまったとはいえ、一体どうなっているのだろう。

 何が何だかわからない間に、再び厨房から坂部くんがさっきのタルト型を持って私の前に戻ってきた。


「短時間で出来るように、今日は冷凍庫で急速冷凍をかけた」