「溶かしたチョコレートとすでに温めてある生クリームだ。チョコレートの入ったボールに生クリームを入れて混ぜて」

「……はい」

「自分で家でやるときは、チョコレートに温めた生クリームを加えて、その熱で溶かすといい」


 ぐるぐると渦を描いていた生クリームの白い線が、チョコレートに溶け込んでいく。

 均一に混ざったところで、坂部くんはさっきまで私が作業していたタルト型を手前に動かした。


「混ざったら、今混ぜ合わせたチョコレートを全部この中に入れて」

「……はい」


 坂部くんが前もって計量していたようで、チョコレートはちょうど私が作業していたタルト型の七分目くらいまでで収まる。


「うん、いい感じだな。じゃあ俺はこれを冷やしてくるから、ちょっと待ってろ」

「……うん?」


 一体、何なのだろう。

 言われるがままにやってみたけれど、坂部くんの意図してることはわからずに、タルト型を再び厨房の方へ持っていってしまう彼の後ろ姿を見やる。

 すると、坂部くんと入れ替わるようにして、いつの間にか姿を消していたミーコさんが数種類のフルーツを手に厨房から出てくる。


「次はこのフルーツたちを切ってもらいます」

「……え?」