「はい。結果的には……」


 いろいろ衝撃的なことを聞かされたし、それも含めて想定外のことが起こったけれど、とりあえず甘いものを食べて今は少しホッとしてるから、本来の目的から大きくかけ離れてはいない。


「少しは気分転換になりましたか? 私たちの正体を知ったことで驚かせて悩ませてしまったと思いますが、あなたの浮かない顔はそれだけが原因じゃないですよね?」

「え? ああ、そうですね……」


 ミーコさんもあやかしだから、坂部くんの淹れた紅茶のように何かしらのあやかしの力が働いているのだろうか。


「……どうして自分には何もないのだろうって思うんです」

 不思議なくらいに私は、自分のことについて話していた。


「友達は部活も頑張っていて、将来の夢や適正もある。坂部くんだって、あやかしだということは今まで知らなかったけど、建前上ミーコさんが店主だとしても、実際にはカフェの店主の仕事をしてケーキも作って……」

「ギンさんに関しては、人間の尺度ではかるにはあまりいい対象ではないですね。何たって生きてる年数が違いますから」

「生きてる年数?」

「ええ、ギンさんは現在一二五歳でございます。人間でいうとちょうど成人したくらいにはなりますが、まぁあまり参考にならないでしょう」

「……そう、ですか」


 もはや何を言われてもぎゃーだのえーだの騒がなくなったのは、紅茶の影響だけじゃない気がする。

 ミーコさんの話によれば、実際のあやかしの年齢では坂部くんよりミーコさんの方が歳下らしい。

 何だか、こんがらがってきた。