「ここを必要とされている方が来られたようですね。まだ少し早いですが、開店しましょうか」


 寄り道カフェに来店するお客様は、基本的に、この場所を必要としている人だ。

 この場所を求めている人が、自然と足を運んでしまうようにできているらしい。

 そういう意味では、私も寄り道カフェを必要として、来たのかもしれない。


「あ、私、あの方の接客をしてみても良いですか?」


 以前までは、小難しそうな男性が悩んでいる姿を見ただけで、私には対応できないと思い込んでいただろう。

 けれど、今褒められたということもあって、何となく、私なんかでも誰かの力になれるなら、なりたいと強く思っていた。


「ふふっ。本当にギンさんも変わりましたが、綾乃さんも変わりましたね」

「最初はやる前から無理って言うのが口癖だったのにな」

 二人に口裏を合わせているかのようにそう言われて、何だか恥ずかしくなる。


「も、もう! からかうのはやめてくださいよ」

「すみません、綾乃さん。でも、褒めてるんですよ」

「褒められ慣れてないから照れてるんだろう」


 ミーコさんはともかく、ギンは好き勝手言って……!

 けれど、人間の姿のギンはこちらに歩いてくると、大きな手で私の頭をふわりと撫でた。