今度はなかなか手を伸ばさずに尻尾をじっと見る私に、ギンの少し不機嫌そうな声が飛んでくる。


「何だよ。引っ張るなよ」

「……う、うん……」

 ドキドキとうるさく鳴る鼓動の音を耳にしながら、尻尾に触れる。


「ふわふわする……!」

 すると、想像以上にサラサラとした気持ちのよい毛並みの感触があった。

 私の反応にギンが少し嬉しそうに口角を上げる。


「当然だ」

「何それ。ギ、……ギンって自信過剰? でも正直、触らせてもらえないと思ってた」

「何で?」

「だって、動物って尻尾触ると怒る子多いじゃん」

 近所の犬にも、昔、尻尾を触って追いかけられたことがあるし。


「動物って……。おまえなぁ……」


 ギンは少し呆れたように言う。

 あやかしは動物とは少し違うだろうけど、大きく間違ってないように思うのだが。


「ま、おまえは特別ってことだ」

「……え?」

 今、私のことを特別って……?


「それって、どういう……」


 意味深なギンの赤い横顔に問いかけようとしたとき、

「きゃーっ!」

 カランコロンというドアベルの音が聞こえたと同時に響いた悲鳴が店内を駆け巡る。