顔を合わせる度に勉強のことを厳しく言ってくる祖母からは、自然と足が遠退いていた。

 祖母の様子は母から聞いていたから知っているつもりでいたけど、私は大して祖母のことを知らなかったんだと思う。

 それもまた、私が祖母を遠ざけてしまう原因になっていたのかもしれない。


「今更って感じだけどね」

「ちゃんと近くに居るうちに気づけたんだからいいと思うけど。会えるうちにたくさん会って、話をする方がいい」

「……あはっ。やっぱり坂部くんって変わったよね」

「そうか?」

「変わったよ。何か雰囲気が丸くなった? 前はあんなに人を寄せ付けない感じだったのに。でも、良いことだと思うよ、うん」

「うるさいな」


 そっぽを向く坂部くんは拗ねているのか、頬を赤くして、漆黒の耳と尻尾をふさふさとさせてる。

 そんな姿は坂部くんのキャラに似合わず可愛いくて逆効果だ。

 っていうか、このふさふさの尻尾、一度触ってみたかったんだよね。


「……何だよ」

「あ、えっと。尻尾、触ってみたいなって……」

「は?」

「いや、何でもない!」


 一気に顔に熱が集中し、全然人のことを言えないくらいに、私の方が顔が真っ赤になっている自信がある。

 思わず坂部くんに背を向けるけど、少しして、ふわりと私の頬を坂部くんの漆黒の尻尾が撫でる。


「……別に、触るくらいなら構わない」

「……えっ?」