「でも、それで目が覚めたんだ。俺には、俺のできることを探そうって。そのとき雛乃さんから飴玉と喝をもらって前を向けたように、生きていくうちに壁に当たった人たちに甘いものを提供して、相談にのれるような、そんな場所を作りたいって思ったんだ。できれば、人間であろうとあやかしであろうと、生まれもった見た目や性質が何であろうと、そんな枠組みから解放される空間にしたかった」


 まさかミーコさんが言っていた坂部くんがこのお店を始めるに至った経緯が、祖母が発端になっていただなんて思わなかった。

 人間であろうとあやかしであろうと、生まれもった見た目や性質が何であろうと、そんな枠に囚われない場所を作ろうと思ったのは、きっと坂部くんがあやかしの世界と人間の世界で感じた生きづらさからきているのだろう。

 そんな坂部くんが作った場所だから、ここ、寄り道カフェは居心地がいい場所なのかもしれない。 


「……綾乃は、雛乃さんのことあまり好きじゃないのか?」

 私の反応があまりに意外だったのか、坂部くんは眉を下げて私に問いかける。


「……好きじゃないというか、苦手、かな……。おばあちゃん、昔から厳しくて……」

「まぁ、確かに厳しい人だよな。でも他人のためにエネルギー使って怒れるってすごいことだと思うよ」

「……そうだね。うん」

 坂部くんやミーコさんの話を聞いてから、今更ながらに私の祖母を見る目は大きく変わった。


「……また私からもちゃんと会いに行こうかな」