坂部くんが人間の血を半分引いていることを意図的に黙っていたことも、本来の自分の姿についてあまりよく思ってなさそうだったことも、きっとそういった過去があったからなのだろう。
「だから俺は、人間の姿で人間として生きていくことを強いられた。けど、おまえと同じだ。何もできないし、これといった特技のない俺が生きて行けるほど人間の世界も甘くなかった」
坂部くんにも、そんな風に思っていた時期があったんだ。
今の坂部くんからは、全く想像つかないけれど。
「もうどうしようもなくて、川にでも飛び込んで溺死してやろうかと思っていたとき、雛乃さんに会った」
坂部くんはそばに置いてあった梅味の飴玉を手に取り、私にひとつ差し出す。
「そのとき、雛乃さんからもらったのが梅味の飴玉だったんだ」
「そうだったんだ……」
だから坂部くんは祖母から飴玉をもらったとき、あんな表情をしていたんだ。
「そのとき雛乃さん、まだ今の綾乃と対して年齢も変わらないのに、俺の話を聞いてすごい剣幕に俺に怒鳴ったんだ。何もできないは言い訳だって。何もできないんじゃなくて、何もしようとしてないだけだって。諦めたらそこで終わり。何もはじまらないし、何も変わらない。何でもいいからやってみろ、進んでみろって言われた」
「うわあ……」
何だか祖母らしいけど、それが安易に想像つくだけに、思わず嫌な声が出てしまう。
「だから俺は、人間の姿で人間として生きていくことを強いられた。けど、おまえと同じだ。何もできないし、これといった特技のない俺が生きて行けるほど人間の世界も甘くなかった」
坂部くんにも、そんな風に思っていた時期があったんだ。
今の坂部くんからは、全く想像つかないけれど。
「もうどうしようもなくて、川にでも飛び込んで溺死してやろうかと思っていたとき、雛乃さんに会った」
坂部くんはそばに置いてあった梅味の飴玉を手に取り、私にひとつ差し出す。
「そのとき、雛乃さんからもらったのが梅味の飴玉だったんだ」
「そうだったんだ……」
だから坂部くんは祖母から飴玉をもらったとき、あんな表情をしていたんだ。
「そのとき雛乃さん、まだ今の綾乃と対して年齢も変わらないのに、俺の話を聞いてすごい剣幕に俺に怒鳴ったんだ。何もできないは言い訳だって。何もできないんじゃなくて、何もしようとしてないだけだって。諦めたらそこで終わり。何もはじまらないし、何も変わらない。何でもいいからやってみろ、進んでみろって言われた」
「うわあ……」
何だか祖母らしいけど、それが安易に想像つくだけに、思わず嫌な声が出てしまう。