やっぱり教えてはくれないよね……。
坂部くんの雰囲気からそれを感じ取って、私も外の掃除をしているミーコさんの手伝いに行こうかと思ったところで、再び坂部くんが口を開いた。
「……雛乃さんは、まだ子どもだった俺が路頭で迷っていたときに、手を差しのべてくれた人なんだ」
「……え?」
「俺が人間とあやかしの間にうまれたのは、おまえも知ってのとおりだ。俺や由梨のように人間とあやかしの間の子どもは、本来、とても低い確率でしかできないんだ。だから少数派の俺たちは人間としてもあやかしとしても不完全で、どちらの世界にも馴染むのに苦労する」
「…………」
人間でもなければ、あやかしでもない。
由梨ちゃんもそんなことを言っていた。
坂部くんといい、由梨ちゃんといい、私は身近のあやかしの中であやかしと人間の間にうまれた存在を二人も知っているが、実はそれはかなり珍しいことらしい。
「あやかしだった父と人間の母の間に俺ができた。俺は母と一緒に人間の世界で暮らしていたが、母は俺が十二歳のときに病気で亡くなった。一人になった俺は、一度はあやかしの世界の父親のもとへ行ったが、上手くやれなかった」
坂部くんにとって、とてもつらい過去なのだろう。
眉根をグッと寄せて、嫌なものを吐き出すようにそう言った。
「父親は、不完全な俺なんて要らないと、捨てたんだ」
「そんな……」
「純血のあやかしにとって、人間とあやかしの子どもなんてそんなもんだ」
人間とあやかしの間にうまれた子どもは、あやかしの世界では暮らしていけない──。
この前、由梨ちゃんがそんなことを言っていたけど、坂部くんの身に起こった事実を耳にして私まで胸が苦しくなる。
坂部くんの雰囲気からそれを感じ取って、私も外の掃除をしているミーコさんの手伝いに行こうかと思ったところで、再び坂部くんが口を開いた。
「……雛乃さんは、まだ子どもだった俺が路頭で迷っていたときに、手を差しのべてくれた人なんだ」
「……え?」
「俺が人間とあやかしの間にうまれたのは、おまえも知ってのとおりだ。俺や由梨のように人間とあやかしの間の子どもは、本来、とても低い確率でしかできないんだ。だから少数派の俺たちは人間としてもあやかしとしても不完全で、どちらの世界にも馴染むのに苦労する」
「…………」
人間でもなければ、あやかしでもない。
由梨ちゃんもそんなことを言っていた。
坂部くんといい、由梨ちゃんといい、私は身近のあやかしの中であやかしと人間の間にうまれた存在を二人も知っているが、実はそれはかなり珍しいことらしい。
「あやかしだった父と人間の母の間に俺ができた。俺は母と一緒に人間の世界で暮らしていたが、母は俺が十二歳のときに病気で亡くなった。一人になった俺は、一度はあやかしの世界の父親のもとへ行ったが、上手くやれなかった」
坂部くんにとって、とてもつらい過去なのだろう。
眉根をグッと寄せて、嫌なものを吐き出すようにそう言った。
「父親は、不完全な俺なんて要らないと、捨てたんだ」
「そんな……」
「純血のあやかしにとって、人間とあやかしの子どもなんてそんなもんだ」
人間とあやかしの間にうまれた子どもは、あやかしの世界では暮らしていけない──。
この前、由梨ちゃんがそんなことを言っていたけど、坂部くんの身に起こった事実を耳にして私まで胸が苦しくなる。