「ああ、綾乃か。もうすぐ年末だからな、今年のお金の動きをまとめようと思ってな」


 ある程度はミーコさんがしてくれているとはいえ、最終的には事実上の店主の坂部くんがきっちりしているようだ。

 こういう事務的なところは私はノータッチのため、忙しそうなのに全く手伝えないのが申し訳ない。


 坂部くんのすぐそばには、昨日ここからの帰りに祖母が坂部くんに渡した梅味の飴玉の袋が置かれている。

 口が開封してあるのを見る感じ、すでにいくつかは食べたのだろうか。


「昨日はごめんね。この飴、おばあちゃんの大好物なんだよね。迷惑じゃなかった?」

 いくら坂部くんにとっては恩人だと聞いても、やっぱり申し訳なく思ってしまう。


「いや、迷惑だなんてとんでもない」


 けれど、坂部くんは書類に落としていた目をこちらに向けて、心からそう思っているという感じにそう告げる。

 まさかそんな反応が返ってくると思っていなかっただけに面食らってしまったが、そこまで坂部くんが祖母を慕う理由をちゃんと聞いてみたいと思った。


「……おばあちゃんが、坂部くんの恩人って本当?」

「雛乃さんから何か聞いたのか?」

「ううん。おばあちゃんからは、直接本人に聞けって言われた」

「そうか……」

 坂部くんはそれだけ言うと、再び視線を書類へと落とす。