「ありがとうございます」

 そうは思ったけれど、坂部くんは今まで見たことのないような穏やかな笑みを浮かべて飴玉の袋を受け取った。


 クールな坂部くんがそんな反応を取るだなんて、信じられない……。

 失礼ながらにそう思ってしまったけど、坂部くんは梅味の飴が好きだったとかなのだろうか。

 まあ、祖母は坂部くんにとって恩人なんだとミーコさんが言っていたし、もしかしたら坂部くんは祖母に気を遣ってくれているだけかもしれない。

 何だかいろいろ不思議だ。


 改めて寄り道カフェをあとにしても、坂部くんとミーコさんと祖母に繋がりがあったことを何となく信じることができないまま、祖母の隣を歩く。


「ねぇ、おばあちゃんと坂部くんっていつ初めて会ったの?」

「いつだと思うかい? でも勝手に話したらあの子に怒られてしまうかもしれないから、親しくしている仲なら、直接本人にお聞き」


 坂部くんに聞きづらいから、祖母に聞こうと思ったのだけど、どうやらそれは甘かったようだ。

 けれど坂部くんとミーコさんと会ったからか、そのあと祖母の家まで荷物を持って帰って、何品か料理を一緒に作る間も、ずっと祖母はご機嫌だった。

 *

 翌日の月曜日。

 学校を終えて寄り道カフェへ向かうと、すでに開店準備を終えた坂部くんがレジカウンターのところで書類を整理していた。

 開店前だからなのだろう。坂部くんは、漆黒のモフモフの尻尾と長髪と三角の耳を携えた元の姿だ。この光景も、もうすっかり見慣れた。