「ええ。お優しい雰囲気が特に」

「優しいって、祖母がですか?」


 思わず大きくなりすぎた声に慌てて口を塞ぐ。

 ちらりと横を見ると、歳をとって耳が遠くなった祖母には聞こえていないようだった。


 ますますわからない。

 祖母は今でこそ歳をとっておっとりして見られがちだが、物忘れが酷くなる前は自分にも他人にも厳しい感じの人だったのに……。


「雛乃様は、ギンさんにとって恩人なんですよ」

「え……?」


 祖母が、坂部くんにとって恩人……!?

 どういうことか、もっと詳しく話を聞こうとしたところで、カランコロンと寄り道カフェにお客さんが来たことを告げるドアベルが鳴る。


「すみません。一旦失礼しますね」

 見ると、最近時々来ていた、恋に悩む中学生の女の子二人組の姿があった。


「お客さんが来たね。じゃあ、綾乃ちゃんお邪魔にならないうちに帰りましょう」

「あ、うん……」

 何だか結局、一番気になるところを聞くことができなかった。


「ああ、そうだギン」

 お店のドアの前で一旦足を止めた祖母が、思い出したように買い物袋からさっき買った飴のパックを取り出す。


「はい、これ。スーパーに売ってた安物だけど、よかったらミーコちゃんと食べて」


 それは、祖母が昔から好んで食べている梅味の飴玉だ。

 そんなの渡しても、坂部くん困るんじゃ……。