そんな祖母に対して、上手いことを言ってこの場を切り抜けることは可能だったかもしれない。

 けれど、さすがに私にはそこまでの器量はない。


「うん……。そ、そうなんだ」


 祖母の片眉がぴくりと上がる。

 物忘れが酷くなってきても、元々の教育熱心なところは顕在している。

 そんな祖母にとって、高校生がバイトだなんてと思われているに違いない。


「……私ね、自分に何ができるのかもわからないし、何がしたいのかもわからなくて、ずっと悩んでて……。そんなとき、坂部くんがここで働いてみないかって声をかけてくれたの」


 最初こそ、バイトなんて自分にはできると思えなかった。

 だけど、やってみないとわからないと言われて、私はここでバイトを始めた。


「……最初は失敗ばかりだったけど、最近ちょっと慣れてきて……。いろんなお客さんに美味しいものを出して、相談に乗って、笑顔でありがとうって言われる度に、自分にもちょっと自信がついた気がするの」

「……そうかい。でも、お勉強は? ギンはまぁ……あの子は特別だけど、綾乃ちゃんは普通の高校生なんだから」

「成績もね、ここで働きだしてからの方が良くなったの。自分でもびっくりしてるけど」


 きっとそれは、今までダラダラとしていた生活にメリハリがついたからだろう。

 くわえて、何となく自分に自信がついたことで、やる気もアップしている気がする。