クリスマスが近づいた今日。私は母親にかわって祖母の買い物に付き合うことになった。

 いつも祖母のことは母が手伝いに行っているのだけど、一気に冷え込んだことから母は体調を崩してしまったのだ。


「悪いねぇ、綾乃ちゃんにこんなことをさせて。お勉強で忙しいだろうに」

「ううん、気にしないで。勉強ならちゃんとやってるから」


 祖母は歳を取って買い物でさえ不安がある。祖母のメモをもとに必要なものを購入して、袋に詰める。

 祖母は元々教育熱心で、私が小さい頃から顔を合わせれば勉強してるかと口癖のように聞いてくる。

 いつも祖母の手伝いに母が出向いているのも、勉強しないといけない私に手伝いをさせるなんてという、祖母の考えからきているのだろう。


「荷物は私が持つから」

「綾乃ちゃんひとりじゃ重いから、おばあちゃんもひとつ」


 祖母は久しぶりに孫の私に会えたことがよほど嬉しいのか、ニコニコしながら野菜の入った買い物袋を私の手から取った。

 本当なら家もそう離れてないのだからもっと会いに行けば良いのだが、顔を合わせる度に勉強と口煩い祖母のことを、私はいつからか避けるようになっていたのだ。


「帰ったら、一緒に肉じゃが作ろうね」

「いいのに、肉じゃがくらい。肉とじゃかいもを炒めるくらいなら、おばあちゃんでもまだできるよ。綾乃ちゃんは、お勉強があるでしょう?」

 心配げに言う祖母に、今日だけと自分に言い聞かせて私は何でもない笑みを浮かべる。


「そうだけど、たまにはおばあちゃんと一緒に料理がしたいんだよ」