少し考えても良い言い回しが思い浮かばなくて、私は結局直接的な言い方で問いかけていた。


「……坂部くんにも人間の血が流れているの?」

 ピタリと坂部くんの足がその場に止まる。
 やっぱり、聞いたらいけない内容だったのだろうか。


「誰から聞いた?」

「誰からも聞いてないよ。ただ、由梨ちゃんの元の姿が人間の姿に耳と尻尾をつけたような見た目をしているのは、由梨ちゃんがあやかしと人間の間にうまれた子どもだからって聞いて。坂部くんもそうなのかなって……」


 否定しないっていうことは、真実なのだろう。

 だって本当に違うなら、違うと言えばいいだけなのだから。


 私をジッと見つめる坂部くんは相変わらずのポーカーフェイスで、何を考えているのかわからない。

 少しの間の後、坂部くんは小さく息を吐いた。


「……綾乃は、俺があたかも純血のあやかしのように振る舞っておまえを騙したと思ってるんだよな。自分の生い立ちを隠してて悪かった」


 卑屈っぽい坂部くんの物言いは、何だか私が坂部くんをいじめているようにさえ感じさせる。

 そんなつもりで聞いたわけじゃないのに……。


「別に、騙しただなんてそんな……。私からしたら、純血であろうとそうでなかろうと、あやかしには変わらないように見えるし……」

「まあ、人間にとってはそんなの関係なく、あやかしなんてみんな化け物みたいなもんだもんな」