由梨ちゃんのマンションから私の家までは、百メートルも離れていない。
酔っぱらいに絡まれたらいけないからと坂部くんは言うけれど、商店街を出て住宅地まで歩いてきてしまえば、そうそう誰かに絡まれるなんてことはない。
「本当に良いって言ってるのに」
「何だよ。送ってやるって言ってるんだから、素直に送られてればいいだろ?」
クールに見えて実は優しいんだと思ったのは何だったのかと思ってしまうような俺様発言だ。
いつもじゃないけど、時々坂部くんは強引だ。
あまりしつこく言うのもなと思って、ここは私が折れて坂部くんの隣を歩く。
今も外を歩いているから人間の姿をしている坂部くんだけど、あやかしとしての実際の坂部くんの姿はこの見た目に髪を腰まで伸ばして、黒い三角の耳と尻尾をつけた感じだ。
これまで出会ってきたあやかしは決して多くないから私には断言できないけど、それは坂部くんも由梨ちゃんと同じように人間の性質を持ち合わせているからなのだろうか。
「何だ。さっきからこっちを見て」
「……えっ!」
やばい、気づかれた。
聞くに聞けずにジッと見てしまっていたのだから、当然と言えば当然だ。
「いや、何でも……」
「そうか」
思わず否定してしまったけど、誰もいない二人きりのこの状況はむしろ、坂部くんに本当のことを確認するチャンスなのだろう。
「……あ、あの、坂部くん!」
そんな目的を持って坂部くんに改めて声をかけると、またさっきと同じように「何だ」と坂部くんの漆黒の瞳がこちらに向けられる。
「元の坂部くんの見た目って、由梨ちゃんの元の姿の見た目に似てるよね」
「そうか? まぁ、犬と狼の違いはあれど、三角の耳と尻尾の形は何となく似てるかもしれないな」
「いや、そうじゃなくて……」
確かにそういう意味にも取れる聞き方をしてしまったけど、私が聞きたいこととは少しかけ離れたこたえが返ってくる。
何て聞けばいいのだろう?
酔っぱらいに絡まれたらいけないからと坂部くんは言うけれど、商店街を出て住宅地まで歩いてきてしまえば、そうそう誰かに絡まれるなんてことはない。
「本当に良いって言ってるのに」
「何だよ。送ってやるって言ってるんだから、素直に送られてればいいだろ?」
クールに見えて実は優しいんだと思ったのは何だったのかと思ってしまうような俺様発言だ。
いつもじゃないけど、時々坂部くんは強引だ。
あまりしつこく言うのもなと思って、ここは私が折れて坂部くんの隣を歩く。
今も外を歩いているから人間の姿をしている坂部くんだけど、あやかしとしての実際の坂部くんの姿はこの見た目に髪を腰まで伸ばして、黒い三角の耳と尻尾をつけた感じだ。
これまで出会ってきたあやかしは決して多くないから私には断言できないけど、それは坂部くんも由梨ちゃんと同じように人間の性質を持ち合わせているからなのだろうか。
「何だ。さっきからこっちを見て」
「……えっ!」
やばい、気づかれた。
聞くに聞けずにジッと見てしまっていたのだから、当然と言えば当然だ。
「いや、何でも……」
「そうか」
思わず否定してしまったけど、誰もいない二人きりのこの状況はむしろ、坂部くんに本当のことを確認するチャンスなのだろう。
「……あ、あの、坂部くん!」
そんな目的を持って坂部くんに改めて声をかけると、またさっきと同じように「何だ」と坂部くんの漆黒の瞳がこちらに向けられる。
「元の坂部くんの見た目って、由梨ちゃんの元の姿の見た目に似てるよね」
「そうか? まぁ、犬と狼の違いはあれど、三角の耳と尻尾の形は何となく似てるかもしれないな」
「いや、そうじゃなくて……」
確かにそういう意味にも取れる聞き方をしてしまったけど、私が聞きたいこととは少しかけ離れたこたえが返ってくる。
何て聞けばいいのだろう?