「とにかく今の状況が嫌でずっと寄り道カフェに逃げ込んでばかりだったけど、このまま逃げ込んでばかりじゃ何も変わらないんだよね。実際、お母さんも私が毎日のように寄り道カフェに通ってるのも、私がミーコさんと仲が良いのを知ってるから、特に気に留めてないみたいだし……」

 そして、由梨ちゃんは覚悟を決めたように口を開く。


「ありがとう、綾乃さん。私、一度ちゃんとお母さんと話し合ってみることにする」

「由梨ちゃん……」

「私だって、お母さんにずっと本当の気持ちを隠し続けるのは、嘘をついているみたいでつらいもん」

 にこりと笑った由梨ちゃんは、いつも見る由梨ちゃんの姿よりずっとたくましく見えた。


「……綾乃さん、ミーコさんとギンさんはまだお店にいる?」

「え? うん、ミーコさんもまだいたし、坂部くんは明日の仕込みをしてると思うよ」

「今、お邪魔してもいいかな?」


 さすがにもう閉店時間をすっかり過ぎている。

 どうしようかと思ったけれど、毎日のように今日も由梨ちゃんが来ないと心配していたミーコさんのことを思えば、会わせたいと思った。

 何より、由梨ちゃんが寄り道カフェを必要としているのだから。


「……うん。じゃあ、一緒に行こうか」

 今歩いて来た道を寄り道カフェの方へ引き返す。

 寄り道カフェまで戻ると、正面の入り口はすでに閉まっているため裏の勝手口のそばについているチャイムを押した。


「忘れ物か? ……え、由梨?」