由梨ちゃんが見せてくれた袋の中身は、おにぎりがふたつ。


「二人には先に作って一緒に食べててもらうように言って出てきたので、私は適当にどこかでこれを……」

「……そっか、複雑なんだよね。お母さんに、由梨ちゃんの本当の気持ち、言った?」


 私の言葉に顔をあげる由梨ちゃんは、今にも泣きそうな困った顔をして首を横にふる。 


「……言えるわけ、ないよ。こんなの二人の邪魔をしてるみたいで、お母さんのことも困らせてしまうだけだもん……。お母さんが私に無理させてるって言ってるようなもんだし……。私がいけないのに……、新しいお父さんのことは嫌いじゃないし、むしろよくしてもらってるのに、どうしてダメなんだろう。本当に、私って親不孝だよね」

「ごめんね、由梨ちゃん。でも、ひとつだけ言わせて。それは違う、由梨ちゃんは親不孝なんかじゃないと思う」


 由梨ちゃんは、今、どんな気持ちで私と話しているのだろう。

 早口で捲し立てるような言い方からも、由梨ちゃん自身が、自分の中にある複雑な気持ちに悩んで苦しんでいるのは伝わってきた。

 けれど、それだけ悩んでしまうのは決して親不孝だからじゃない。


「たくさん自分の中で葛藤してしまうのは、それだけ由梨ちゃんがお母さんのことや新しいお父さんのことを考えているからじゃないかな? お母さんのことも新しいお父さんのことも考えられる由梨ちゃんが親不孝だなんて、私は思わないよ」

「そうかなぁ……」

 由梨ちゃんは目尻に溜まった涙をさりげない仕草で指で拭う。