「前みたいに、時々会うくらいがちょうどよかったのにな~。家じゃくつろげないし、ずっとココで暮らした~い」


 寄り道カフェには、人間のお客さんも出入りする。

 だから決してココに来たからと言って、元の姿でくつろげるわけではないのにそんことを口にする由梨ちゃんは、きっと見た目以上に新しいお父さんのことで思い詰めているのだろう。


「さすがにそこまではできないけど、いつでも遊びに来てくれていいからね」

「はーい。そうだ、宿題のここの問題わからないんだった。綾乃さん、教えてよ」

「えぇっ!? 私にわかるかな……」


 いつもこんな感じに由梨ちゃんの根本的な問題を解決することができるわけではないけれど、私は一人の店員として由梨ちゃんを寄り道カフェで迎え入れ、由梨ちゃんが望むときは話し相手になった。

 それくらいのことしかできないけれど、坂部くんが言っていたように、少しでも由梨ちゃんにとって居心地の良い場所を提供していきたい。



 そうしているうちに十二月になり、商店街はすっかりクリスマス一色に染まる。

 学校では先日期末テストが行われたが、バイトを始めたことで成績が下がったと言われてしまわないように、必死に勉強した。

 結果、特別成績がよかったわけではないが、以前の成績より少し上がっていて、母親にはものすごく驚かれたのはつい昨日の話だ。

 部活もバイトも自分にはできないと思って何もやってなかったときの方が、絶対に勉強する時間はたくさん取れていたはずなのだから、それも無理ないだろう。

 そんなある日のことだった、毎日のように顔を見せていた由梨ちゃんがお店に見えなかったのは。