「それで根本的なものが解決するわけじゃないかもしれないが、由梨がまた助けを求めてきたら手を差し出して、話を聞いてほしそうにしてたら話を聞いてやる。それだけでも由梨は救われてると思うぞ」


 坂部くんのことをちゃんと知るようになるまでは、クールな一匹狼は心が冷たいんだと思ってた。

 けど、やっぱり坂部くんは不器用なだけで、優しい。


 思わず坂部くんと見つめあっていることに気づいて、慌てて視線を手元に落とす。

 話に集中しすぎていたせいで、ベストの汚れはすっかり取れていたが、部分洗いのはずがベストは全体が水浸しになっていて、手先は冷たくなっていた。

 気恥ずかしさをもごまかすようにベストを絞りながら口を開く。


「坂部くん、少し変わったよね」

「……は?」

「最近、坂部くんがクラスの男子と話してるところを見かけることが増えたなって思って」

「それはあいつらが勝手に話しかけてくるからで……」


 坂部くんは、少し困ったように眉を寄せる。

 けれど、決して心から嫌だと思っているわけではないことは、見ててわかった。


「それでも進歩じゃん。前までいかにも俺に話しかけるな、近寄るなって感じだったのに」

「……そうか?」

「そうだよ。私は、嬉しいよ」


 少し前に坂部くんに身の回りの人を受け入れてと話したとき、坂部くんは善処すると言っていたが、ちゃんと坂部くんなりに考えてくれたということなのだろう。