私は人間だから、あやかしの気持ちも、ましてやあやかしと人間の子どもの気持ちも完全にはわからないところがあると思う。

 けど、たとえそれがよく知った仲の人間だとしても、他人が家族として一緒に暮らすとなれば、人間同士でも難しい。

 だから、本来の姿を隠して母親の再婚相手と家族になることを強いられる由梨ちゃんの苦悩は相当なものだろうし、拒んでしまうのも当然だろう。


「何か、由梨ちゃんのためにできることがあればいいのに……」

「綾乃は充分やってるじゃん」

「いやいやいや、全っ然」


 思わぬ言葉をもらって、それを全否定するように首を横にふる。

 けれど、坂部くんは、至って真面目な顔でこちらを見ていて、思わず恥ずかしくなった。


「……だって、最近になって寄り道カフェでの仕事も慣れてミスとかしなくなったけど、私なんて大したことできないし……」

「そうか? 京子さんの力にもなったし、あの吹奏楽の女子のことも助けてたじゃん」

「あれは、たまたまで……っ」

「まぁ仮にたまたまだとしても、それだけ綾乃が相手の心に寄り添おうとした結果なのは間違いないんじゃないか? 今回だって、由梨のことを真剣に考えてくれてるみたいだし」

「そうかもしれないけど……。でも由梨ちゃんには、結局何もできてないよ」


 坂部くんの言う通り、みんなの心に寄り添うことで私が何か役に立てているのなら本当に嬉しい。

 けれど坂部くんはそうは言っても、由梨ちゃんのことに関しては何もできてないし、どうしていいかすらもわからない。


「自分の居場所がなくなったと感じている由梨に、居場所をちゃんと作ってやってるじゃん。今はそれでいいんじゃないか?」

 それなのに、そんなことを言ってくれる坂部くんの顔を思わず見つめる。