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 それからというもの、由梨ちゃんは毎日のように寄り道カフェを訪れるようになった。

 初日の帰り際のシリアスさはまるで嘘のように、由梨ちゃんは元気はつらつとした姿を見せた。

 けれど、人間の小学生と何ら変わらない無邪気に笑う姿を見ていると、由梨ちゃんが無理に演じているものなのではないかと考えてしまう。


 由梨ちゃんが毎日寄り道カフェにに来て、ケーキセットを食べて、日が暮れるまで宿題をして帰るようになって、はや一週間が過ぎてもそれは変わらなかった。

 坂部くんやミーコさんの話によると、私がお休みしている土日も朝から夕方まで、寄り道カフェに来ていたそうだ。

 それほど混み合っているお店ではないから、それ自体お店としては問題ないみたいだけれど、由梨ちゃんは一体どんな気持ちで毎日寄り道カフェに来ているのだろう。



「……の? 綾乃?」

「は、はいいいいぃぃっ!」

 ポンと肩に手を乗せられた衝撃で、思わずその場に直立してしまう。


「どうしたのよ。びっくりした……」

 目の前には、怪訝そうに首をかしげる明美の姿があった。

 さっきまで教室で授業を受けていたはずなのに、いつの間にか終わって昼休みになっていたようだ。


「ごめんね。ちょっと考え事してて」

「ははーん。さては恋の悩み?」

「へ……?」

「隠さなくていいの。最近、綾乃が何か悩んでる感じだったのには、気づいてたんだから」

「それは……っ! バイトのことでいろいろ考えていただけで、そんなのじゃ……」

「綾乃のバイトって、坂部も一緒だもんね。ほら、やっぱり坂部のこと考えてたんじゃない」