「話せるわけないじゃん。前のお父さんと別れてからずっとしんどそうだったお母さんが、やっと幸せになれたのに……」
苦しそうにこたえる由梨ちゃんに、ミーコさんは申し訳なさそうに、先ほどから飛び出したままの三角の白い猫耳を下げる。
本来ならすぐに引っ込めていそうな猫耳がそのままなのは、きっと今は他にお客さんがいないからなのだろう。
「そうですよね、すみません……」
由梨ちゃんはミーコさんの腕の中で、小さく首を横にふる。
「新しいお父さんとは、上手くいかれてないのですか?」
「ううん、仲良しだよ。三年前からよくうちに遊びに来てたし、私もよく遊んでもらってたし」
でも……、とミーコさんから少し身を離し、由梨ちゃんは肩を落として口を開く。
「新しいお父さんは人間なの。前のお父さんも人間だったけど、前のお父さんはお母さんがあやかしだって知ってたから良かった。けど、新しいお父さんはお母さんがあやかしだって知らないの」
「そうでしたか……」
「うん。前のお父さんは元々あやかしのことを知ってる人だったみたいだけど、新しいお父さんはお母さんの職場で知り合った普通の人間だって、お母さんが言ってた」
人間の世界で暮らすあやかしが、人間の前では他の人間と何ら変わりない姿で過ごしているのは、人間を必要以上に脅かさないためだ。
あやかしのことを知らない人間の前でいきなりあやかしの正体を晒したら、それこそ化け物扱いされてしまう。
苦しそうにこたえる由梨ちゃんに、ミーコさんは申し訳なさそうに、先ほどから飛び出したままの三角の白い猫耳を下げる。
本来ならすぐに引っ込めていそうな猫耳がそのままなのは、きっと今は他にお客さんがいないからなのだろう。
「そうですよね、すみません……」
由梨ちゃんはミーコさんの腕の中で、小さく首を横にふる。
「新しいお父さんとは、上手くいかれてないのですか?」
「ううん、仲良しだよ。三年前からよくうちに遊びに来てたし、私もよく遊んでもらってたし」
でも……、とミーコさんから少し身を離し、由梨ちゃんは肩を落として口を開く。
「新しいお父さんは人間なの。前のお父さんも人間だったけど、前のお父さんはお母さんがあやかしだって知ってたから良かった。けど、新しいお父さんはお母さんがあやかしだって知らないの」
「そうでしたか……」
「うん。前のお父さんは元々あやかしのことを知ってる人だったみたいだけど、新しいお父さんはお母さんの職場で知り合った普通の人間だって、お母さんが言ってた」
人間の世界で暮らすあやかしが、人間の前では他の人間と何ら変わりない姿で過ごしているのは、人間を必要以上に脅かさないためだ。
あやかしのことを知らない人間の前でいきなりあやかしの正体を晒したら、それこそ化け物扱いされてしまう。