「ギンのことについては、私からは何も教えられないわ。またプライバシーがどうとか言われて怒られちゃうから。気になるなら自分でギンに聞きな」

「えー」

「あたしは確かにおしゃべりだけど、話すなといわれてしまったことは話さないようにしてるつもりよ。じゃあ、そろそろ行くわね。バイバーイ」


 膨れる私の頬を指先でツンとつつくと、京子さんは頭上で手を振りながら、今度こそ寄り道カフェをあとにした。


 はっきりとしたことは坂部くんに直接聞け、かぁ。

 そういえば京子さんと話していたとき、坂部くんは、プライバシーの侵害だと言って話を中断してきたなと思い返す。

 あのとき、何を話していたっけ?

 確か坂部くんとのことをからかわれて、人間とあやかしの恋を勧められて……。そうだ、坂部くんのご両親がどうとか、京子さんが口に出したときだ、坂部くんが私たちの話を止めたのは。


 もしかして坂部くんの両親のどちらかは、人間なのだろうか。

 でも、それならどうしてこれまで教えてくれなかったのだろう。

 もしかしてあやかしと人間の間にうまれることは、由梨ちゃんも坂部くんもあまり嬉しいことではないのだろうか。


 由梨ちゃんもどこかなげやりな言い方だったことを考えると、いくら坂部くんに直接聞きたいという気持ちが出てきたところで、あまり聞いてはいけないことのように感じてためらわれる。