「そんなんじゃないけど、ここに来る前にこのお姉さんとぶつかってしまって……」

「あら、そうだったのですね。由梨ちゃんは、最近姿をお見かけしておりませんでしたが、うちの常連さんの一人です」

 ミーコさんは、そう私に由梨ちゃんを紹介してくれる。


「綾乃さんは、最近バイトでここを手伝ってくださってるんです。ギンさんのクラスメイトでもあるそうです」

「さっきはごめんね」

 ミーコさんに私のことも由梨ちゃんに紹介してもらい、さっきは届いたかわからなかった謝罪の言葉を伝える。


「私こそごめんなさい……」

 また拒絶されたらどうしようという気持ちがあったものの、由梨ちゃんは斜めに視線を落としながら小さくそう伝えてくれた。その姿から今は拒絶されていないことがわかって、良かったと内心胸を撫で下ろす。


「ううん。大丈夫だった? 結構思いっきりしりもちついてたし、肘も擦りむけちゃってたよね」

「あ、ちょっと!」


 私の胸元くらいまでの身長の女の子のそばにかがんで、女の子が擦りむいた肘に目をやる。

 それと同時に由梨ちゃんが少し慌てたような声を上げた。


「あれ……?」


 どういうわけか、さっき私が由梨ちゃんの左肘にあるのを見た擦り傷は、全く跡形もなくなくなっている。

 確かに怪我をしていたと思ったのだけれど、私の記憶違いだろうか?

 内心戸惑う私を見てなのだろう。由梨ちゃんは訝しげに口を開く。


「おねえさん、ギンさんのクラスメイトって言ってたけど、……やっぱり人間?」

「……え?」

「ねえ、ミーコさん。どうなの?」