私が言い終わるより先に、女の子はレジのところで事務作業をしていたミーコさんの方へ駆けていった。


「え……っ!?」

 あまりに見覚えのある横顔に、私は思わず声が出る。

 というのも、今ミーコさんの方へ駆けていった女の子は、私がここに来る途中にぶつかった小学生だったのだから。

 レジの方で事務作業をしていたミーコさんは、指名を受けてレジカウンターの下から顔を出す。


「いらっしゃいませ。由梨(ゆり)ちゃんじゃないですか。大きくなられて。お久しぶりですね」


 女の子は由梨ちゃんと言うらしい。

 どうやら、ミーコさんと由梨ちゃんは顔見知りのようだ。


「ミーコさん、会いたかったよぉ~!」


 どことなく親しげな雰囲気から、由梨ちゃんもまたここの常連さんなのだろうか。

 どうみても普通の小学生にしか見えなかったのに、寄り道カフェの常連さんかもしれないと思うと、途端に由梨ちゃんはただの小学生に見えなくなってくるのは、この場所のせいだろうか。


 由梨ちゃんは数言ミーコさんと言葉を交わしたあと、ミーコさんに連れられてこちらに歩みを進める。


「あ……っ! さっきの……っ」

 そのとき、こちらを向いた由梨ちゃんは私を見るなり目を丸くして、少し気まずそうに視線を落とした。


「もしかして、おふたりはお知り合いでしたか?」

 私たちの様子を見て、ミーコさんは何かを察したようにたずねる。