レジのところで事務作業をしていたミーコさんが、話を振られてにっこりと愛らしい笑みを浮かべる。

 どうしてこうも周りは私と坂部くんをくっつけたがるのか。


「そうですか……? 私にはそうは見えませんが……」

 だけど、そんな私にはミーコさんはふふふと笑うだけだ。


「もしかして人間とあやかしだからって遠慮してる? 大丈夫よ、私の歴代の彼氏も人間ばっかりだし。障害の多い恋って燃えるわよ?」

「いや、そうじゃなくて……」

「ギンの両親も確か……」


 そのとき、すぐ近くで低い咳払いが聞こえる。

 私と京子さんが音の聞こえた方を見ると、うっとうしそうに眉を寄せた坂部くんがすぐそばに立っていた。


「おしゃべりに花を咲かせるのは結構ですが、人のプライバシーまでベラベラ話さないでください」

「何よ、大したこと話してないじゃない。だって綾乃って、ギンの元の姿も見てるんでしょ?」

「それとこれとは別ですから。いちいち余計なことを吹き込まないでください」


 まるで吐き捨てるように言った坂部くんの声に、胸がきゅうっと締め付けられるような苦しみを覚える。

 そんなに知られたくないことだったのかな……。