「……はい。みんな大丈夫だよとか残念だったねって表面では励ましてくれるんですけど、本当は迷惑だとか思われてるんだと思います」

「……それは誰かが言ってるところを聞いたの?」

「いえ。でも、みんなの目が怖いんです。見えない本心が怖いんです。私自身もまた次があるって言われても、一度あんな酷い失敗をしてしまうとまた同じことを繰り返してしまうような気がして怖くて……」


 夏の大会での失敗。それが浜崎さんにとって大きなトラウマになってしまっていることは最初からわかっていたが、こればかりはどうしていいかわからない。

 でも、そんなトラウマを植えつけられても、浜崎さんはトロンボーンが好きなのだろう。

 吹奏楽が、好きなのだろう。

 だから浜崎さんは、こっそり体育館に吹奏楽部の演奏を聴きに行ったり、今日みたいにマスコットを取りに来たはずがトロンボーンを吹こうとしたりしていたんだと思う。


「……浜崎さんは、本当に吹奏楽部辞めて後悔しない?」

 浜崎さんの肩が小さく揺れる。


「私ね、思うんだけど、きっと高校三年間ってあっという間だと思うの。だって私は去年の春に入学したばかりだって思うのに、もう高校生活も折り返し地点だもん。まだ一年半あると思っても、すぐに過ぎちゃうと思う」

「……そうですね。三年って長いようで、終わってみると短いですよね。中学のときに実感しました」