そのとき、ふと遠目に音楽室から楽器のケースを持った女子生徒が出てくるのが見えた。
あれ? あの楽器ケースって吹奏楽部?
以前、明美が見せてくれた楽器ケースとは形が違うけれど似ている。
吹奏楽部って朝練やってたっけ? 明美はむしろ文化祭が終わって一段落ついたと言っていたくらいなのに。
他に部員がいる様子はなく、あの女子生徒だけ自主的に練習しようと朝早くに学校に出てきたのだろうか。
そうだとしたら、ものすごく練習熱心な生徒だ。
何気なくその女子生徒を見ていたら、不意に彼女がこちらを振り返った。
「あ……っ」
私を見て、驚きと戸惑いを交えたように顔をくしゃりと歪めたのは、浜崎さんだった。
瞬間、浜崎さんはその場を走り出した。
「待って!」
けれど、楽器を持っていることもあってなのだろう。
この前のよりも速く走れないようで、私はすぐに浜崎さんに追いついた。
私が浜崎さんの前に回り込んだとき、浜崎さんはヨロヨロと力なくその場に膝まづいた。
「部長には、黙っててください」
「……えっ?」
「私がここに来てたこと、知られたくないんです」
「浜崎さん、ちょっと場所変えようか」
あれ? あの楽器ケースって吹奏楽部?
以前、明美が見せてくれた楽器ケースとは形が違うけれど似ている。
吹奏楽部って朝練やってたっけ? 明美はむしろ文化祭が終わって一段落ついたと言っていたくらいなのに。
他に部員がいる様子はなく、あの女子生徒だけ自主的に練習しようと朝早くに学校に出てきたのだろうか。
そうだとしたら、ものすごく練習熱心な生徒だ。
何気なくその女子生徒を見ていたら、不意に彼女がこちらを振り返った。
「あ……っ」
私を見て、驚きと戸惑いを交えたように顔をくしゃりと歪めたのは、浜崎さんだった。
瞬間、浜崎さんはその場を走り出した。
「待って!」
けれど、楽器を持っていることもあってなのだろう。
この前のよりも速く走れないようで、私はすぐに浜崎さんに追いついた。
私が浜崎さんの前に回り込んだとき、浜崎さんはヨロヨロと力なくその場に膝まづいた。
「部長には、黙っててください」
「……えっ?」
「私がここに来てたこと、知られたくないんです」
「浜崎さん、ちょっと場所変えようか」